》だッ」白木警部の呶鳴《どな》る声がしました。
 私もその声に、ハッキリと目が醒《さ》めました。ハッと思って傍《そば》を見ると、一緒にいた筈の兄の荘六《そうろく》の姿が見えません。
「兄さん――」
 呼んでみても、誰も返事をする者がありません。
「もしもし、兄を知りませんか」
「帆村君かネ」と警部さんも訝《いぶか》しそうにあたりを振りかえってみました。「そこにいたと思ったが、見えないネ」
 私は急に不安になりました。
 警部さんは巡視隊《じゅんしたい》を編成《へんせい》すると、勇しく先頭に立って歩きはじめました。
「私も連れていって下さい」
「ああ、恐ろしくなければ、ついて来給《きたま》え」
 そういって呉《く》れたので、私も隊伍《たいご》のうしろに随《したが》って歩き出しました。
 歩いているうちにも、化物の封鎖された隧道《トンネル》のことよりも、兄のことが心配になってたまりません。私はあたりをキョロキョロ眺《なが》めながら歩いてゆくので、幾度となく線路や枕木に蹴つまずいて、倒れそうになりました。
 隧道《トンネル》の入口に近づいてみますと、昨夜とはちがって白昼《はくちゅう》だけにそ
前へ 次へ
全81ページ中64ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング