分けして黒田を探してこい。進めーッ」
警部は命令を下しました。一同はサッと其《そ》の場《ば》を散りました。家の中に引かえすもの、門の方へ行くもの、木立《こだち》の中へ入るもの――僚友《りょうゆう》の名を呼びつつ大捜索《だいそうさく》にかかりました。しかし黒田警官の姿は何処《どこ》にも見当りません。
「警部どの、見当りません」
「どうも可笑《おか》しいぞ。どこへ行ったんだろう」
そうこうしているうちに、庭の方を探しに行った組の警官が、息せき切って馳《は》せ帰《かえ》ってきました。
「警部どの。向うに妙な場所があります」
「妙な場所とは」
「池がこの旱魃《かんばつ》で乾上《ひあが》って沼みたいになりかかっているところがあるんです。その沼へ踏みこもうという土の柔《やわらか》いところに、格闘《かくとう》の痕《あと》らしいものがあるんです。靴跡が入《い》り乱《みだ》れています。あんなところで、誰も格闘しなかった筈《はず》なんですが、どうも変ですよ」
「そうか、それア可笑しい。直《す》ぐ行ってみよう」
警部さんはその警官を先頭に、急いで乾上った池のところへ駈けつけてみました。
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