か、黄色い絨氈《じゅうたん》が長々と廊下に伸びているのが、いまにもスルスルと匍《は》い出しそうに見えます。
そのとき私の腕をソッと抑《おさ》えた者があります。ハッと駭《おどろ》いて振りかえると、何のこと白木警部です。
「怪物のいる部屋は何処かネ」
と警部は私の耳に唇を触《ふ》れんばかりに囁《ささや》きました。
「……」
私は無言のまま、すぐ向うの左手の扉《ドア》を指《さ》しました。老婦人を囲んで、怪《あや》しげなる服装をつけた頭のない生物が、蜥蜴《とかげ》のように蠢《うご》めいているところを又見るのかと思うと、いやアな気持に襲《おそ》われて参《まい》りました。
警部は首を上下に振《ふ》って大きい決心を示しました。「懸《かか》れッ!」サッと警部の手が扉《ドア》の方を指しました。
黒田巡査が最先《まっさき》に飛び出して、扉の把手《ハンドル》に手をかけると、グッと押しました。
「オヤ、あかないぞ」
ウーンと力を入れて体当りをくらわせてみましたが、どうしたものかビクとも開かないのです。
「警部どの、これァ駄目です」
「扉《ドア》を壊《こわ》して入れッ。三人位でぶつかってみろ」
三
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