これだけの隊員が一度にドッと飛びかかれば、流石《さすが》の妖怪たちも忽《たちま》ち尻尾《しっぽ》を出してしまうことであろうと、大変|頼《たの》もしく感ぜられるのでした。


   怪物《かいぶつ》の怪力《かいりき》


「では出動用意」警部は手をあげました。「第一隊は表玄関より、第二隊は裏の入口より進む。それから第三隊は門内《もんない》の庭木の中にひそんで待機をしながら表門を警戒している。本官とこの少年は第一隊に加わって表玄関より進む。――よいか。では進めッ!」
 警官はサッと三つの隊にわかれ、黙々《もくもく》として敏捷に、たちまち行動を起しました。
 私はすっかり元気になって、第一隊の先頭に立ち、表玄関を目懸《めが》けて駈け出しました。
「オイ少年、静かに忍びこむのだよ」
 たちまち注意を喰いました。そうです、これは戦争じゃなかったのでした。あまり活溌《かっぱつ》にやると、妖怪たちは逃げてしまうかも知れません。
 玄関は静かでした。訓練された七名の警官は、まるで霧のように静かに滑《すべ》りこみました。階下の廊下は淡《あわ》い灯火《とうか》の光に夢のように照らし出されています。気のせい
前へ 次へ
全81ページ中32ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング