ゅう》を手短かに話してきかせました。
「ウフ、そんな莫迦《ばか》なことがあってたまるものか。この小僧はどうかしているのじゃないですか」
例の若い警官黒田巡査は、あくまで私を疑っています。
「まアそう云うものじゃないよ、黒田君」分別《ふんべつ》あり気《げ》な白木《しろき》警部は穏《おだや》かに制して、「なるほど突飛《とっぴ》すぎる程の事件だが、僕はこの家を前から何遍《なんべん》も見て通った時毎《ときごと》に、なんだか変なことの起りそうな邸《やしき》じゃという気がしていたんだ」
「そうです、白木警部どの」とビール樽《だる》のように肥った赤坂巡査が横から口を出しました。「ここの主人の谷村博士は、年がら年中、天体望遠鏡にかじりついてばかりいて他のことは何にもしないために、今では足が利《き》かなくなり、室内を歩くのだってやっと出来るくらいだという話です」
「可笑《おか》しいなア、その谷村博士とかいう人は、確《たし》かに空中をフワフワ飛んでいましたよ」私は博士が足が不自由なのにフワフワ飛べるのがおかしいと思ったので、口を出しました。
「それは構わんじゃないか」黒田巡査が大きな声で呶鳴《どな》るよ
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