う夢中で走りました。
「オイ何者かッ。停まれ、停まれ」
私の顔面には突然サッと強い手提電灯《てさげでんとう》の光が浴せかけられました。おお、助かったぞ!
怪しき博士の生活
「この小僧《こぞう》だナ、さっき電話をかけてきたのは」
無蓋《むがい》自動車の運転台に乗っていた若い一人の警官が、ヒラリと地上に飛び降りると、私の前へツカツカと進み出てきました。
「僕です」私はもう叱《しか》られることなんか何でもないと思って返事しました。「トンチキ野郎などと大変な口を利《き》いたのもお前だろう」
「僕に違いありません。そうでも云わないと皆さん来てくれないんですもの」
「オイオイ、待て待て」そこへ横から警部みたいな立派な警官が現れました。「それはもう勘弁《かんべん》してやれ」
私はホッとして頭をペコリと下げました。
「それでナニかい。一体どう云う事件なのかネ。君が一生懸命の智慧《ちえ》をふりしぼって僕等を呼び出した程の事件というのは……」
警部さんには、よく私の気持が判っていて呉《く》れたのです。これ位|嬉《うれ》しいことはありません。私は元気を取戻しながら、一伍一什《いちぶしじ
前へ
次へ
全81ページ中29ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング