《む》いていました。私はそこにあったスタンドを取上げてどんな細かいことも見遁《みのが》すまいと、眼を皿のようにして観察してゆきました。
しかし別に手懸《てがか》りになるようなものも見えません。台をして上の方もよく見ました。だんだんと反対の側を下の方へ見て行きましたが、
「オヤ」
と思わず私は叫びました。
「これは何だろう?」
硝子の切《き》り削《そ》いだような縁《ふち》に、白い毛のようなものが二三本|引懸《ひっかか》っているではありませんか。ぼんやりして居れば見遁《みのが》してしまうほどの細いものです。余り何も得るところがなかったので、それでこんな小さなものに気がついたわけでした。
これを若《も》し見落していたならば、この怪事件の真相は、或いはいまだに解けていなかったかも知れません。それは後《のち》の話です。
私はハンカチーフを出して、その白い毛のようなものを硝子の縁から取りはなしました。そしてそのまま折《お》り畳《たた》んで、ポケットに仕舞いこんだのでした。
丁度《ちょうど》そのときです。
戸外《こがい》に、やかましいサイレンの音が鳴り出しました。
ブーウ、ウ、ウ。ブ
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