う考えて来ると、折角《せっかく》謎がとけてきたように見えましたが、どうしてどうして、答はますます詰《つま》ってくるばかりです。なぜなれば、そんな眼に見えないもの(又は眼に見え難《にく》いもの)で、莫迦《ばか》に大きいもの、そして硝子を壊《こわ》す力があるようなもの、そしてそれは誰が抛《な》げたか――イヤそれはまるで化物屋敷の出来ごとでもなければ、そんな不思議は解けないでしょう。
「ム――」
と私は其の場に呻《うな》りながら腕組《うでぐみ》をいたしました。
眼に見えないか、見えにくいもので、盥《たらい》位の大きさ、形は丸くて、硝子を壊す位の重いもので、その上、簡単に室内から投げられるようなものとは、一体何だろう。
怪《あや》しい白毛《しらげ》(?)
私はそのときに、「崩れる鬼影」という謎のような言葉を思い出しました。
ああいう非常時に、人間というものは、驚きのなかにも案外たいへんうまい形容の言葉を言うものです。「鬼影」というも「崩れる」というも、決して出鱈目《でたらめ》の言葉ではありますまい。ことに此《こ》の家《や》の老婦人も兄も、全く同じ「崩れる鬼影」という言葉を
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