わけです。
(室内の圧力が高いということは、どういう状態にあったのかしら?)
 風船ではないのですから、この室内だけに特に圧力の高い瓦斯《ガス》が充満していたとは考えられません。それに窓硝子の壊れる前に、私はこの室内へ入っていたのです。扉を破って入ったときに、室内に圧力の高い瓦斯と空気が充満していたものだったら、私は吃度《きっと》強く吹きとばされた筈です。しかし一向そんな風《ふう》もなく、普通の部屋へ入るのと同じ感じでありました。するとこの室内に高圧瓦斯が充満していたとは考えられません。
(すると、それは一体どうしたわけだろう)
 こんな風に窓硝子が壊れるためには、もう一つの考え方があります。それは何か大きい物体を、この室から戸外へ抛《な》げたとしますと、こんな大きな孔が出来るかも知れません。いつだか銀座のある時計屋の飾窓の硝子を悪漢《あっかん》が煉瓦《れんが》で叩《たた》き破って、その中にあった二万円の金塊《きんかい》を盗んで行ったことがあります。あの調子です。しかし煉瓦位では、こんなに大きい孔はあきそうもありません。少くとも盥《たらい》位の大きさのものを投げたことになります。
(だ
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