した。だが電話をかけようとして、私はハタと行《ゆ》き詰《づま》ってしまいました。どこのお医者様がいいのだか判らないのです。そのとき不図《ふと》気がついたのは所轄《しょかつ》の小田原《おだわら》警察署のことです。
(まず警察へこの椿事《ちんじ》を報告し、救いを求めよう。それがいい!)
警察の電話番号は、電話帳の第一|頁《ページ》にありました。私は自動式の電話機のダイヤルを廻しました。――警察が出ました。
「モシモシ。小田原署ですか。大事件が起りましたから、早く医者と警官とを急行して貰って下さい」
「大事件? 大事件て、どんな事件なんだネ」
向うはたいへん落付いています。
「兄が天井に足をついて歩いていましたが、下におっこって気絶をしています。いくら呼んでも気がつかないのです」
「なにを云っているのかネ、君は。兄がどうしたというのだ」
「兄が天井に足をつけて歩いていたんです」
「オイ君は気が確かかい。こっちは警察だよ」
ああ、これほどの大事件を報告しているのに、警察では一向にとりあってくれないのです。私はヤキモキしてきました。
「まだ大事件があるのです。ここの主人が、先刻フワフワと空
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