なり、兄は又ガクッとして、床の上に仆れてしまいました。
丁度そのときガチャーンと大きな物音がして、硝子《ガラス》窓が壊《こわ》れました。見ると門の方に面した大きい硝子窓には盥《たらい》が入りそうな丸い大きい穴がポッカリと明いているのです。不思議にも硝子の破片《はへん》は一向に飛んで来ません。別に何物も硝子窓にあたったように見えないのに、これは一体どうしたということでしょう。
次から次へ、不思議としか言うことの出来ない事件が起ったのです。私は気を失った兄を膝の上に抱き起したまま、老婦人が始めに呟き、それから又兄が今しがた叫んだ謎の言葉を口の中に繰《く》りかえして見ました。
「崩れる影、崩れる鬼影《おにかげ》!」
信じられない事件
月の明るい箱根の夜の出来事でした。空中をフワフワ飛んでゆく白衣《びゃくい》の怪人が現れたかと思うと、間近くから救いを求める老婦人の金切声《かなきりごえ》が起りました。救いに行った、私の兄の帆村荘六《ほむらそうろく》は、その洋館の一室で、足を天井につけ、身は宙ぶらりんに垂下《たれさが》っていました。ニュートンの万有引力《ばんゆういんりょく》の法
前へ
次へ
全81ページ中14ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング