って飛び出しました。入口を出ると、そこには二階へ通ずる幅の広い階段があります。何か組打《くみうち》をしているらしい騒々《そうぞう》しい物音が、その上でします。私は階段を嘗《な》めるようにして駈けのぼりました。
「兄さーん」
 二階の廊下を走りながら叫びました。
「兄さんッ」
 ところが俄《にわ》かにハタと物音がしなくなりました。さあ心配が倍になりました。いままで物音のしていたと思われる室の扉《ドア》をグッと押しましたが開《あ》きません。
「うーッ」
 変な呻《うな》り声が、内部《うち》から聞えます。正《まさ》しくこの部屋です。
 私は身体をドンドン扉にぶつけました。ぶつけて見て判ったことです。扉には鍵がかかっているのだろうと思ったのに、そうではないらしいです。何か向うに机のようなものが転がっていて、それが扉の内部から押しているらしいです。それならば、力さえ籠《こ》めれば開くだろうという見込《みこみ》がつきました。
 ドーン。
 ガラガラと扉が開きました。
 部屋の中へ飛びこんでみますと、そこは図書室のようでもあり、何か実験をしている室でもあるらしく、複雑な器械のようなものが、本棚の反対
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