後の川上からの通信に待つことにしている。川上は命のつづくかぎり、飛行島の秘密を知らせてよこす筈だ。情況によっては、或いは君が喜びそうな新しい帝国海軍の行動がはじまるかもしれない。それまでは鋭気をやしないながら、飛行島の様子を通じて相手国の出ようをにらんでいなければならぬ。しかしわしの見るところでは、一般に考えられているところとはちがって、目下の事態は刻々悪い方へ動きつつあるように思う」
「ええっ、悪い方へ?」
長谷部大尉は、思わず短剣の柄を力いっぱいぎゅっと握りしめた。
南シナ海の波浪は、誰知らぬ間に、刻一刻荒くなってゆきつつあるのだ。
そのとき入口の扉《ドア》がこつこつと鳴った。
「おう、入れ」
すると扉が開いて、思いがけなく副長が入って来た。その手には一枚の受信紙を持って――。
長谷部大尉は直ちに直立して、挙手の礼をささげた。
「只今これを受信いたしました」
さしだす紙片を艦長は手にとって、読み下した。
「コンヤハンドレペイジチヨウジユウバクゲキキ五ダイトウチヤクシタ。トウサイバクダンハ――トツゼンキケンセマル、ムセンキカイハツケンセラレタ……」
艦長の顔色が変った。
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