「うむ、『今夜ハンドレペイジ超重爆撃機五台到着した。搭載爆弾は――』のところで本文が切れている。それから先は本文ではなくて警報だ。『突然危険迫る。無線機械発見せられた……』とあるから、さては川上もその場で捉まってしまったか。ざ、残念だ」
 艦長室の三人の士官は、無念そうに互の眼と眼を見合わせた。
 大任を帯びて飛行島に渡った川上機関大尉も、遂に使命半ばにして斃れてしまったのであろうか。
 途中で切れた無線電信は、そも如何なる波瀾が飛行島に巻きおこったことをものがたるのであろうか。


   不思議な看護人


 話は、すこし前にもどる。
 杉田二等水兵が自殺を決心して、手錠をはめられたまま飛行島の甲板から海中にとびこもうと走るうち、うしろからスミス中尉がピストルを撃ったことは、みなさん御存じのとおりである。
 杉田二等水兵の体はもんどりうって海中へ墜ちてゆくうち、不意に下の甲板から、その体をうけとめた不思議な中国人のペンキ屋さんがあったことも、よく憶えていられるであろう。
 杉田二等水兵は、あれから一たいどうなったのであろうか。
 なぜその中国人のペンキ工は、命がけの冒険までして、杉
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