重大な決意を固めてあの飛行島に単身忍びこんでいるのに違いありませぬ。艦長。私のこの考えをどう思われますか――」
そういって長谷部大尉は、艦長のコップに、また酒を満々と注いだ。
「なるほどなあ、――」
「ふだんから仲よしだったからいうのでありませんが、彼奴は実に珍しくえらい男です。そういうことを本当にやってのける男です。しかも寸分の間違もなくやるという恐しい男です。川上は必ず飛行島に忍びこんでいます。そしてわが帝国のために命をあの飛行島で捨てようとしているのです。われわれはそういう彼の壮挙をよそにこのまま日本へ帰ることはできません」
艦長はこれを聞くと、
「ではどうしようというのか」
はじめて強い質問をこころみた。
「練習艦隊は万難を排して、もう一度飛行島にかえるのです。そして川上の行方をさがすと共に、いやしくも日本に対する陰謀を発見するなら、そのときは容赦なく飛行島を撃沈してしまう。いまのうちに片づけてしまう方が、いろいろな点から考えてどの位上分別かわかりません。脱艦者の汚名を着せられた川上も、そこではじめて救われるのです。艦長、どうか練習艦隊を飛行島へ即刻ひきかえすことに賛成し
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