んだ。日英海軍は昔から師弟関係にある。だからわしは、君を侮辱するつもりはない。しかしここはわしの支配する飛行島だ。なにごとも正直にいってもらわねばならん。そうすることが、日英海軍のあいだに横たわっている誤解をなくすることにもなるのだ。ねえ、分かるだろう。――君はなぜ飛行島に来たのかね」
 杉田二等水兵は、むっとした。日中戦争のときも、英国海軍はたびたび眼にあまる邪魔をしたではないか。なにが誤解だ。なにが師弟関係だ。世界大戦のとき英国海軍に力をあわせ、印度その他の英国領土を守ったり、運送船を保護したりして、恩こそ与えてあるが、こっちが恩になったことはないのだ。こんな癪にさわる話など聞きとうもない。その上、侮辱を加えられたり、調べられたりするくらいなら、死んだ方がましだ。こうなっては川上機関大尉を探すことは、まず百中九十九までむずかしい。
 彼は遂に死のうと決心した。帝国軍人は恥を知る。こいつらの慰みものになるくらいなら死んだ方がましだ。
「くそっ、――」
 杉田は隙をうかがい、体をひねって、彼をおさえている無頼漢をその場にふりとばした。そして相手のひるむ隙に、さっと入口から甲板の上へとび
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