がいに、どやどやと乱れた足音がして、広間へ入ってきたものがある。
それは何者であったか。
警務班長のマットン中佐が先頭にたち、あとにはヨコハマ・ジャックなどの荒くれ男が四、五人つきしたがい、その一行の真中には、半裸体のまま両手に手錠をかけられたわが勇士、杉田二等水兵がひったてられているのだった。
「少将閣下、日本の水兵が、この飛行島に入りこんでいるのを捉えてきました。ヨコハマ・ジャックなどの手柄です」
「なんだ、日本の水兵が入りこんでいたというのか。ふーむ、この男か」
リット少将は、杉田の日焼した逞しい顔をじろじろと見つめ、
「なぜ君は、飛行島に残っていたのですか」
通訳の下士官が、少将の言葉を杉田二等水兵に伝えた。
「……」
杉田はもう観念していた。囚《とらわ》れの身となっては一言も答えるべき必要はない。
「ほう、手ごわいのう」と少将は不機嫌になって、
「君たちの仲間はいく人いるのかね」
杉田二等水兵は、相変らず黙っている。
リット少将は、じろりと杉田の方を見てから、にわかに作笑《つくりわらい》をし、
「わしは日本にいくども行ったことがある。日本の海軍士官とも親交がある
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