やりこの地点に根をはやしているのではない。時速三十五ノットでもって移動ができるのですよ」
「なに、飛行島が三十五ノットで走る」
 ハバノフ氏は、おどろきの眼をみはった。


   世界の大陰謀


「こんなに大きな飛行島が三十五ノットで走るなんて、そんなばかなことがあるものですか。三十五ノットといえば、大型駆逐艦か甲級巡洋艦の速力だ」
 と、ハバノフ氏は信用しない。
「いや、ところがちゃんと三十五ノットで移動できるのです。日本海軍の一万|噸《トン》巡洋艦でも追駈けることができますよ。――いや、まだ驚くことがある。これは極秘中の極秘であるが、この飛行島には最新式のハンドレー・ページ超重爆撃機――そいつは四千馬力で、十五|噸《トン》の爆弾を積めるが、その超重爆撃機を八十機積むことになっている。だからこの飛行島は、見かけどおりの飛行島ではなく、世界最大の航空母艦なんです。どうです、これで驚きませんか」
「ほほう、それは初耳だ。――でもまさか超重爆がこの短い飛行島甲板から飛びだすとは、常識上考えられませんよ」
「それは御心配には及ばん。飛行甲板は、戦車の無限軌道式になっていて、猛烈なスピードで
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