事なことだ。その荷物をうけとって帰艦するまで、どんなことがあっても、俺が命令したということをしゃべっちゃいかんぞ」
妙な命令だと思ったが、杉田は承知しましたと答えた。
「じゃあ、ここで別れる。時間まではゆっくり遊んで来い。気をつけてゆけ」
そういって機関大尉は、またぐっと力を入れて杉田の手を握ったのであった。
機関大尉は共楽術を奥の方へすたすたと歩いていった。そしてある店舗のかげに、姿を消してしまった。これが機関大尉を見た最後だったのである。
杉田は、共楽街を散歩する非番の労働者やその家族たちと肩をならべて歩きまわった。そして手まねでもって、甘いココアを飲んだり、肉饅頭《にくまんじゅう》を食べたり、それから映画館に入ったりして時間いっぱいに遊びまわった。そして帰りぎわに川上機関大尉のいいつけどおり広珍に寄って、矮鶏《ちゃぼ》の合札とひきかえに、一つの荷物をうけとって帰艦したのだった。
彼はすぐとその足で、荷物を川上機関大尉の室にもって入った。
荷物はすぐに開けという命令だ。
杉田は、この荷物の中に一体なにが入っているのか知らなかった。彼は早く中の品物をみたかった。さっそく
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