包紙をやぶってみると、その中はまた紙包になっていた。なんのために、そう厳重にしてあるのだろうかと怪しみながら、二重三重の包紙をやぶって、やっと待ちに待った品物が、杉田二等水兵の眼の前に出てきた。それを見た時、彼は驚きのあまり、思わずあっと叫んだ。
品物は一たい何であったろうか。
白い機関大尉の軍服、軍帽、短剣、靴、襦袢その他のものであった。
「これはどうしたんだろう」
杉田二等水兵は、自分の眼を疑った。調べてみると、これはたしかに川上機関大尉の着ていった服装だ。実に不可解なことだ。
杉田はその時、包の中に一枚の紙切が入っているのを見つけた。彼は思わず胸をおどらせて、それを開いた。
はたしてそれは、川上機関大尉の筆蹟で認《したた》められた杉田にあてた手紙であった。
その文句は次のようであった。
「――杉田。驚カナイデ、ヨクコノ手紙ヲ読ンデクレ。
(一)コノ荷物ノ中身ガ何デアッタカ誰ニモイウナ。
(二)コノ品物ハスグチャントシマッテクレ。
(三)コノ手紙ハスグ焼キステロ。ソシテオ前ハ俺ノ行動ニツイテ、昼間飛行島デ別レテカラ後ノコトハ、スベテミナ忘レルノダ。オ前ガ秘密ヲヨク守ルコ
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