どろくべきニュースを報道した者の姿をさがした。
「はっ、――」
と答えはしたが、その先生は急に頭をかいて、こそこそ逃げ出そうとする。その姿を見ると、外ならぬ大辻二等水兵だった。
「なんだ、大辻じゃないか。早くこっちへ出て当直将校の前で話せ」
大辻はもじもじしながら長谷部大尉の前に出てきた。
「ははあ、お前か。――」
長谷部大尉は呆れた。村の鎮守さまにおしゃべりをしない誓をたてたといった例の大男である。杉田の脱艦したことを自分がしゃべったことは、ないしょにしておいてくれと、さんざん頼んでいったその大辻二等水兵だったから、これが呆れずにいられようか。
大辻は、ふだんから赤い顔を一層赤くしながら、いまにも泣き出しそうである。
「わ、私がしゃべらないといけませんか」
「あたりまえだ」
長谷部大尉は一喝した。
「杉田の脱艦について要領よく、ありのままにしゃべれ、村の鎮守さまの方は、あとから俺があやまってやる」
「うへっ、――」と大辻は眼を白黒させ、
「――では申し上げますが、杉田はいま申しましたとおり、午前十時二十分、艦側から海中にとびこんだのであります」
「ふむ――それから」
「杉田
前へ
次へ
全258ページ中32ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング