を外すことを忘れるな」
 敵と引組んだまま甲板に転んでいる川上機関大尉は、フランク大尉の鉄拳の雨に叩かれながら、喉もはりさけるように叫んだ。
 杉田の返事は、もうなかった。
 甲板の薄明の中に、重傷まだ癒えぬ杉田二等水兵が、爆弾をしっかり小脇に抱いて、とととっと走ってゆくその後姿が見えた。川上にとって、それが杉田二等水兵の見納となった。
「――天皇陛下、ばんざーい」
 血を吐くような絶叫がかすかに聞えた。それは正しく杉田二等水兵の声であった。そのとき彼の姿は、爆弾庫の口から消えていたのだ。彼は爆弾の安全弁を外すと、そこへ飛びだした敵の水兵を片手で殴り倒すが早いか、爆弾を抱えたまま、爆弾庫の中に身をおどらせてとびこんだ。川上機関大尉に代り、身をもってこの大任務を遂行したのであった。
 杉田の姿が見えなくなると、川上機関大尉は、全身の力をふるって逆にフランク大尉をしめあげた。
「ううっ」
「えい!」
 一秒、二秒、三秒……。その時ぴかり! 眼もくらむような一大閃光!
 途端に二人の転がっている甲板が、鰐の背中のように震えだしたと思った刹那、が、が、がーんと百雷が一時に落ちたような大爆音!

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