ひきつれて立っていた。


   非常呼集


「おお、スミス中尉か。よく来てくれた。しかし夜中、一たいこれは何ごとか」
 リット提督は、心に覚《おぼえ》のある悪夢に虐《しいた》げられ、まだ幾分の弱気で中尉にすがりつかんばかりだった。
「ああ提督閣下」とスミス中尉は、まじまじと正面から顔うちながめ、
「御病気ではなかったのですね。それはよかった」
「うん、――」
「提督閣下。哨戒艦から、しきりに信号があります。どうもわが飛行島大戦隊を外部から窺っているものがある様子です」
「なに、外部から窺っているものがあるというのか。また日本の潜水艦か」
「いや、それはまだはっきり分かっていません。とにかく、わが戦隊は目下極秘航行中でありますので、無電を発することを禁じてありますため、信号がなかなかそう早くは取れないのであります。無電を出すことをお許しになりませんと、わが大戦隊はいざというときに、大混乱をおこすおそれがあります」
「いや、無電を出すことを許せば、わが飛行島大戦隊の在所《ありか》を、敵に知らせるようなものじゃ。そいつは絶対に許すことができぬ」
 リット提督はこのへんで、やっとふだんの提
前へ 次へ
全258ページ中236ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング