督らしい威厳をとりもどしたようであった。
「はあ、分かりました」
 スミス中尉は、やむを得ないという顔をして、
「では当直へ、そのように伝達いたします」
「うむ」
 スミス中尉が、室を出てゆこうとした時、
「ああスミス中尉。ちょっと待て」と提督は声をかけた。
「はあ、何か御用でありますか」
「わしは今夜司令塔へ詰めようと思う。だからあと三十分も経ったら、ここへ迎えにきてくれんか」
「はい、かしこまりました。すると今夜はもうお寝みにならないのですか」
「うん、わしは今夜、もう寝るのはよした」
「御尤もです。私も今夜あたり、どうも何か起りそうな気がしてなりません。提督が司令塔にお詰めくだされば、わが飛行島の当直全員もたいへん心丈夫です」
 スミス中尉は、提督が悪夢におびえて睡られなくなったのだとは知らないから、リット提督が司令塔へ出かけるようでは、今夜はよほど警戒しなければならぬわけがあるのだと思った。
 リット提督も、スミス中尉を戸口まで送ったが、彼の耳には、甲板の索具にあたって発するすさまじい嵐の声が、なんだか亡霊の呻声のように思われた。
 中尉が水兵たちをひきいて立ち去ろうとした時、
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