「うっ、亡者ども、わしを海中へひっぱりこもうというのか。なにくそ、ひっぱりこまれてたまるか」
 提督は、あぶら汗をかいて、うんうんうなりだした。ひっぱりこまれまいとするが、刻一刻、提督の体は舷を超えて海面へ落ちようとする。恐しい執念だ。――
「リット提督!」
 提督の耳に、はげしく扉を叩く音が聞えた。
「ううーん、ううーん」
「提督、どうされました。スミス中尉です」
「なに、スミス中尉。お前もか」
 と叫んだが、途端に提督は夢からはっと覚めた。彼はベッドの中で、自分で自分の喉をしめていたのだ。
「ああ夢だったか。恐しい夢もあったものだ。ああ、夢でよかった」
 提督は、全身汗びっしょりだった。
 つづいてはげしいノックの音!
「提督、ど、どうされました。スミス中尉です。早くここを開けて下さい」
「おお」提督はほっと大きな息をついて、ベッドからよろよろと下り、「スミス中尉か。いま開けてやる」
 扉を開けると、外は真暗で、嵐を呼ぶ物凄い潮風が、ひゆうひゅうと鳴っていた。そして、きりっとした武装に身をかためたスミス中尉が、片手には手提《てさげ》電灯を、また片手にはピストルを握り、一隊の水兵を
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