。それでも三十分あまりの後、彼はとうとう最下層の甲板までたどりついた。
 甲板の隅で、川上機関大尉はしばらく息をいれていたが、そのうちに元気をとりかえしたものと見え、その狭い通路を匐うようにしてそろそろと場所をうごきだした。
 すると、真正面から、いきなりあらあらしい足音が近づいた。
 川上機関大尉は、はっと体を縮めるなり、飛鳥のようにカンバスのうしろにとびこむと、そのかげに平蜘蛛のようにぴったりとはりついた。
 やがて彼の眼の前を、長身の水兵が鼻唄まじりで、風のように通りすぎた。
(おお、気づかれずにすんだか。もちっとで鉢合せをして、呼笛でもふかれるところであった)
 川上機関大尉は、ほっと胸をなでながら、積みかさねられたカンバスの山のかげから姿を現した。
 すると今度は、反対に後方から、別のあらあらしい足音が聞えた。
(あっ、見つかってはたいへん!)
 もうカンバスの山にかえる暇はなかったので、思いきって通路を向こうへ、つつーと栗鼠《りす》のように駈けぬけた。
(どこか、隠れるところはないか)
 と、そこに見えた横道にとびこむと、これがなんと行きどまりの袋小路だった。
(しまった!
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