)
と思ったが、もうおそい。
足音はいよいよ近づいた。息をのむ間もなく、飛べば二足ほどの向こうの角へ一人の下士官が姿を現した。
(見つかった)
下士官は、川上機関大尉のとびこんだ袋小路へ顔を向けた。そしてあっというなり、たじたじと後へさがったが、すばやく右手を肩にかけたサックに伸ばしたと思うと、とりだした一挺のピストル。
もうおしまいだった。
「えい!」
川上機関大尉の体が前かがみになったと思ったら、右手にさっと閃いた白刃《はくじん》!
ばさりという鈍い物音と、う――むといううなり声とが同時におこった。下士官はピストルをがらりと投げすてると、首のところへ手をもってゆくような仕種《しぐさ》をしたが、そのときはもう甲板の上に、仰向けになって倒れ、呼吸《いき》がたえていた。
じつに見事な腕の冴《さえ》であった。相手の下士官は、ついに一発の弾丸も放たないで、あの世へ旅立ったのだ。
「おお、この服装が欲しかったのだ」
川上機関大尉の狙っていたお土産は、向こうから転がりこんだようなものであった。彼は駈けよるなり、早いところ倒れている下士官の服を脱がしてしまった。そしてすばやく自分の
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