、実はこれにも神明の加護があったのである。それは川上がブルー・チャイナ号に乗船したときのことだった。彼は飛行島に潜入したときに近づきになった比島の志士カナモナ氏が数本の日本刀を持っているのを見て、無理にねだって、二本を譲りうけたものであった。それは二人の勇士にとって、この上もなき利器であった。
「はっ、では杉田は、ここで部署を守っております」
「よし、しっかり頼んだぞ」
「では、御無事を祈っています」
「うむ、行ってくる。くれぐれも短気をおこしてはならんぞ。――ああそうだ。俺が行ってしまって、力のないお前が、万一激浪にさらわれてはいけない。そういう危険のないように、お前の体を、この鉄骨にしばりつけておいてやろう」
川上機関大尉の心は、どこまでも注意ぶかく、そして傷つける部下の身の上にやさしかった。
小暗い下甲板
川上機関大尉は、半裸体に、日本刀を背中に斜に負い、組立鉄骨をのぼっていった。
鉄骨の表面は、海水にじめじめと濡れていて、リベットに足をかけると、そのままずるずると滑りおちて腕をすりむいたり、足の生爪をはがしたり、登攀《とうはん》はなかなか容易な業ではなかった
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