った。一たいどうしたというのだろう。浮かぶ飛行島をめぐる怪事件の幕は、こうして切って落された。
極東の風雲急なるとき、突如として練習艦隊内に起ったこの事件は、そもいかなる意味があるのか。
南シナ海の上は、今日もギラギラと熱帯の太陽が照りつけて、海は毒を流したように真青であった。
おしゃべり水兵
幾度考えてみても、奇怪な事件である。
だが、奇怪なのはそればかりでなかった。
長谷部大尉が、水兵から聞いたところによると、機関大尉の服は一着のこらず、ちゃんと私室に揃っているというのである。
それなら機関大尉は、いま裸でいなければならぬ理窟になる。
ところが、いつも身のまわりの世話をしていた杉田二等水兵の話によると、彼は機関大尉に連れられて、その日の午後飛行島に上陸したが、その時機関大尉はちゃんと海軍将校の服装をしていたという。
実に奇妙な話である。この謎は一たいどう解けばいいのだろうか。
練習艦明石は、怪事件をのせたまま夜を迎えた。
いつも夜は元気のいい水兵たちの笑声で賑やかな兵員室も、今夜にかぎってなんとなく重苦しい空気につつまれていた。
「杉田は、まだ帰っ
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