いかなる死地にあっても、くそおちつきにおちついて物事を考える。そして、よしとなったらどんなことでもやり通さずにはおかない恐るべき実行力を見こまれたからであった。
 一たい人間というものは、その相手から思いきった大胆なことをやられると、却って気をのまれてしまって、なにも手だしができないものである。これが死地にあって敵と闘うときの最上の極意である。わが川上機関大尉は、この尊い極意をちゃんと心得ていたのだ。
 フランク大尉はピストルの引金に手をかけた。
「覚悟はよいか。一から十まで数えおわれば、この引金をひくのだぞ。さあ数えるぞ、一《ひ》イ、二《ふ》ウ、三《み》イ、……」
 数え出したフランク大尉の緊張にひきつってゆく真青な顔。
 だが見よ、どうしたというのだ。川上機関大尉は、死が数秒の後に迫っているというのに、エンジンの前のハンドルを懸命にあやつり、メートルの指針をいちいち直してゆく操作ぶりのあざやかさ! まるで目前の仕事に身も魂も打ちこんでいる真剣そのものの姿ではないか。フランク大尉は、その凄じい気魄にたじたじとなったが、必死にこらえて、
「――五《い》ツ、六《む》ウ、……」
 のこるは
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