一しょにあがりましたが、そこで私は機関大尉と別れたのであります。それ以後のことは、私は――私は知らんのであります」
「知らない。ふむ、そうか」
副長はさらに大勢の兵員を集めて聞いてみたがどうも分からない。
川上機関大尉が帰艦していないことは、長谷部大尉の耳にも入らずにはいなかった。
彼はすぐさま機関室へとんできた。
「川上機関大尉が帰らぬというが本当か」
それは遺憾ながら本当のことだった。
「これはけしからぬ。よし、俺がいって探してこよう」
長谷部大尉は、すぐさま艦長のところへ駈けつけて、機関大尉を探すために上陸方をねがい出でた。
すると艦長は、
「司令官にお聞きするから、暫く待て」
といった。
暫くたって、長谷部大尉は艦長によばれていってみた。嬉しや上陸許可が下りたかと思いの外、
「司令官はお許しにならぬ。誰一人も上陸はならぬといわれる。また一般にも、言葉をつつしみ、ことに飛行島の方に川上機関大尉のことを洩らすなとの厳命だ。のう、分かったろう。分かったら、そのまま引取ってくれ」
艦長は、長谷部大尉の胸中を思いやって、苦しそうにいった。
そういわれれば、下るよりほか
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