いで杉田の枕辺にかけよった。
 梨花はけなげにも、扉の外に立って、見張にあたる。窓硝子は、彼女があやまって壊したのではなく、これぞ川上機関大尉のいいつけによってわざと壊したのであった。


   再会


「ああ上官!」
 と杉田は胸がせまってあとはいえない。
 川上機関大尉は部下の手をぐっと握って、
「杉田、よく辛抱していたな。それでこそ、真の日本男児だ。銃剣をとって、敵陣地におどりこむばかりが勇士ではない。報国の大事業のため、しのぶべからざる恥をしのび、苦痛にこらえているお前も、また立派な勇士だ。しかし梨花にきけば、お前はこのごろ食事もあまりとらぬということじゃないか。そんなことをして体を弱らせておいては、いざという時に思いきった働きができないではないか」
 川上は部下を励ましたり叱ったりした。これにはさすがの杉田二等水兵も一言もない。
「川上機関大尉。私が悪うございました。これからは体を大切にいたします。そしてどんなことがあっても望を捨てず、ご奉公の折の来るのを待ちます。申しわけありませぬ」
 病床から、杉田は川上機関大尉の手をおしいただいた。
「うむ、よくいった。ここは敵地だ。
前へ 次へ
全258ページ中136ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング