焦るな。体力をやしなえ。そして機会がいたったときは、俺と一しょに死んでくれ」
「はい、――」
「杉田二等水兵。もう長話はできぬが、この飛行島もいよいよ近く動きだすぞ」
「えっ、飛行島がうごきだしますか」
「そうだ。試運転をはじめるようだ。貴様もよく気をくばっておれ、いよいよ手を借りるときは、梨花にたのんでお前に伝えるからな」
「はい、よく分かりました」
 このとき梨花が、扉をことことと叩いた。誰か来るとの知らせである。
 川上機関大尉は、もう一度病床の杉田の手を握りしめ、
「さあ、誰か来た。気づかれるな。俺の硝子入替えの腕前をそこで見物しとれ」
「上官は硝子の入替えにも御堪能でありますか。私はおどろきました」
「うふ、――」
 川上機関大尉は、杉田のそばをはなれるとまた元の中国人の硝子屋にかえって、ぬからぬ顔で壊れた窓硝子のパテをはがしにかかった。
 扉をあけて入ってきたのは、さきの看護婦とリット少将の二人だった。
「なんだマリー。こればっかりの窓硝子なんか何でもないじゃないか、どんどん入替えさせるがいい。しかし硝子は丈夫な硬質硝子でないと、本艦が二十インチの主砲をどんと一発放った時は
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