。はっと思う瞬間だったが、水兵はおどろいてとびのくなり、挙手の敬礼をして走りさった。
 だが、油断は大敵であった。
 細心の注意をもって、川上機関大尉は、うす暗い廊下を奥へ進んでゆく。彼の目的は、一たいどこにあるのであろうか。
 いうまでもなく、爆弾庫を狙っているのである。小脇に抱えている投下爆弾を、爆弾庫になげこんで、一挙にして飛行島を破壊し海底に沈めてしまおうというのであった。
 なんという破天荒の計画であろう。またなんという大胆な行動であろう。
 爆弾庫の口が、やっと見えた。
 川上機関大尉は、さあもう一息だとばかり、爆弾を小脇にしっかり抱えて、つつーっと小足早に駈けだした。
「待て!」
 いきなり後から、川上機関大尉の肩をつかんだ者がある。
 ふりはなして、走ろうとすると、また肩をつかまれた。
「待て! 怪しい奴だ」
 大力でもって、川上はずるずるとひきよせられた。
 誰? ふりかえると、フランク大尉であった。
「あ、貴様、まだ生きていたのか。そんな恰好をしていても俺はだまされないぞ」
「えい、放せ」
「放してたまるか。そこに抱いているのは爆弾ではないか。おい、それをどうする気か」
「なにを!」
 フランク大尉は、鉄拳を固めて川上機関大尉の頤を狙ってつきだした。二人の組打となった。爆弾はどんと下に落ちて、ごろごろと壁の方へころがった。
 川上機関大尉も懸命だが、フランク大尉の強いことといったら、話にならぬ。
 組打が長びいて、フランク大尉の加勢が五人十人とふえて来ては面倒だ。機関大尉は気が気ではなかった。
(残念だ! もう一歩というところで――)川上の腸《はらわた》はちぎれるようであった。
 そのとき何者か、川上機関大尉の落した爆弾に駈けよって、ひょいと肩にかついだ者があった。


   輝く二勇士


「おお、その爆弾に手をふれる奴は、うち殺すぞ」
 川上機関大尉は、必死で呶鳴った。
「上官、もうすっかれ敵に囲まれました。爆弾は上官に代り、私が持って投げこみます」
「おお杉田か。貴様はどうしてここへ」
「どうして私ばかりがじっとしていられましょう。私は縛られた紐をといて下甲板に上り爆弾庫を狙って来たのです。が、今ここで会うのは、天の引合せです。――や、機関銃隊が出てきました。もう猶余はなりません。では上官、お別れです」
「おう杉田。では頼むぞ。爆弾の安全弁
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