故に、痒《かゆ》さあまりて遂に月賦の催促などして居られなくなるを以て、そこを覘《ねら》ってこっちは雲を霞と遁走《とんそう》するのである。
 家ダニは一名エロ虫と称せられ、身体の軟部を好みて喰いつくを以て、ところによりては痒み甚だしきあまり厖大に発熱|腫脹《しゅちょう》(?)し、数時間なおらぬものなるを以て、そこを考えて、一種の若返り法として用いるもよろしく、健康なるものには一層健康さを加えしめ、和合《わごう》の実《じつ》をあげるによろし。
(本器の売価は一個金十五円也とし、その半分は国家へ税金として納付させる。詰《つ》め換《か》え用家ダニ十匹|筒入《つついり》十銭、五十匹筒入四十銭、百匹七十銭。なお徳用缶千匹入、二千匹入などを作る。)

 切符を折らせない方式
 本方式は折ってはならない切符を折るときは、切符内より鼬《いたち》の最後屁《さいごっぺ》の如き悪臭ある粘液を排泄《はいせつ》し、指などに附着するときは約一週間後にあらざれば、悪臭が脱けないように製作し、よって切符を折らせない方式である。
 これは某市電の某車掌君の発明にかかるものである。およそ人間というものは、しつけの悪いもので
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