十銭しか出て来ぬときは、卵パンをかじることとし、万一不幸にも一銭も出て来ぬときは、武士は喰わねど高楊子《たかようじ》をいたし、晩飯をうまく喰う楽しみを得るものとす。
本器は賭博マニアに与《あた》うるときは、従来生じたる如き一切の不幸不孝の数々より遁《のが》れ得《う》るものにして、ひいて家庭円満を来たすこと、火を見るより明かなり。
(本器一個の値段は一円七十銭の見込み。但し初充電に金二十円を投入し置くをよしとす。)
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本器一台を備うるときは、シガレット電熱器を点火し得べく、二台を備うるときはスタンドを点火し得べく、もし十五台を備うるときは電気ストーブを点火し得べし。
その構造は、籠型《かごがた》にして、円形をなすトラックあり。やや地下鉄のトンネルに似る。使用法は、猫を入れ、その前面に透明セルロイド板の来るよう、セルロイド板より二本の針金を出し、それを後に控えたる猫の顎《あご》に取付けるなり。
次に、そのセルロイド板の前方に、鼠《ねずみ》を一匹入れるものとす。然《しか》るときは、猫は鼠を追掛ける習慣あるを以て、その地下鉄トンネルの如き籠の中のトラックを疾走し、鼠また胆
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