こへ『通信事務』のハンコをペタリと捺《お》して、お住居《すまい》へ送り返せ!」
[#ここで字下げ終わり]


   多忙病の人に捧げる

 千手観音《せんてかんのん》装置
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秘書「そりゃ私も忙しくて閉口してますよ。だが、失礼ながら君の名はノトーリアスですよ、ロクなものを持ってこんという専《もっぱ》らの評判ですが、知っていますか。」
小僧「弁解は忙しいのでしません。まず品物を見られよデス。」
秘書「こりゃ何だ、義手《ぎしゅ》じゃないか。君、間違えちゃいけませんよ。私には正しく二本の手がありますよ。」
小僧「三本の手があっても、忙しくて足らん……とよく申しますネ。つまりこの義手は二本の手があっても、なおかつ忙しい人に取付けるのです。試みに一本つけてごらんなさい。」
秘書「こりゃ駭《おどろ》いた。」
小僧「それで左の手で、電話の受話器を持ち、右の手に握った鉛筆で、向うの云う用件を紙の上に書き……それから補手《ほしゅ》でもって、薄くなった頭の頂上をゴシゴシと掻《か》いてごらんなさい。」
秘書「こりゃ奇妙だ。……四五本、置いていってくれ給え。」
[#こ
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