いたか、それをいいなさい」
係官は、明らかに、房枝を、うたがっている様子であった。
そうでもあろう、房枝は、日本人ばなれした大きなからだの持主だったし、皮膚の色も、ぬけるような白さだったし、外国で覚えた化粧法が、更に日本人ばなれをさせていた。
「団長さんと、別れ別れになってしまったものですから、よく覚えていないのですわ」
「それじゃ、君が日本人たることの証明が出来ないじゃないか。え、そうだろう」
「まあ、あたくしが、日本人じゃないとおっしゃるのですか。ひどいことをおっしゃいますわねえ」
「その証明がつかなければ、ここは通せない」
「では、あたくしたち、ミマツ曲馬団の仲間の人に、証明していただきますわ」
それから房枝は、いろいろと願って、生残《いきのこ》りの団員たちを呼びあつめてもらった。こんなときに帆村がいれば、どんなに助かるかもしれないのだけれどと、くやしくなった。
けっきょく、仲間の人たちの証言も、係官を納得させるほど十分ではなかったが、船員の中に、房枝が乗船当時調べたことをおぼえている者があって、その証言で、やっと上陸を許可された。ただし条件つきであった。
「常に、居所《
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