いどころ》を明らかにしておくこと。毎月一回、警察へ出頭すること。よろしいか」
房枝は、今日ほど自分が捨子であることを、もの悲しく思ったことはない。原籍がわからないために、こんな疑いをうけるのである。
(ああ、お母さま、お父さま。房枝は、今、こんなに悲しんでいます。ああ)
彼女は、胸に手をおいて、心の中ではげしく、まだ見ぬ父母に訴《うった》えた。
この房枝のかなしみを、いつの日、誰が解《と》いてくれることやら。
やっと解放された房枝たちミマツ曲馬団員は、一まず横浜のきたない旅館に落ちついた。これから、一同の身のふり方を、いかにつけるのかの、相談が始まった。けっきょく、他に食べる目当もない一同だったから、人数は半分以下にへったが、ともかくも、空地《あきち》にむしろを吊ってでも、興行をつづけることにきめた。そしてその第一興行地を、今生産事業で賑《にぎ》わっている東京の城南《じょうなん》方面にえらび、どうなるかわからないが、出来るだけのことをやってみようということになった。
城南方面を第一興行地にしようじゃないかといいだしたのは、調馬師《ちょうばし》の黒川だった。彼は松ヶ谷団長にかわ
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