手はつくしてみます」
「そうして、もらいましょう。われわれの一方的な希望としては、この資料により、一日も早く博士の会社で、X塗料を多量に生産してもらいたいのです。このX塗料を一日も早く多量に用意しておかないと、われわれは心配で夜《よ》の目もねむられませんからねえ」
 黄島長官は、立ち上って、彦田博士に握手をもとめ、そして、つよくふった。
「それから、帆村君を、われわれの連絡係として、ときおりあなたの工場へ、使《つかい》してもらいますから、よろしく」
 長官は、ことばを添《そ》えた。

   捨子《すてご》は悲し

 話はかわって、その後の房枝《ふさえ》はどうなったであろうか。
 あのおそろしい雷洋丸の爆沈事件にあい、房枝は、死生の間をさすらったが、彼女ののったボートが、うまく救助船にみつけられ、無事に助けられたのであった。
 彼女たちは、その明日の夕刻、横浜に上陸することが出来た。もう無いかと思った命を拾うし、そして故国《ここく》の土をふむし、房枝の胸はよろこびにふるえた。
 ここで、彼女は、同胞《どうほう》のあたたかい同情につつまれて、涙をもよおした。
 手まわり品や、菓子や、それか
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