もあらば入りたそうである。
「とにかく、工場の方と連絡をしてみよう。彦田《ひこだ》博士に、ここへ来てもらおう」
「彦田博士?」
「君は、彦田博士を知らないのか。博士は、篤学《とくがく》なる化学者だ。そして極東薬品工業株式会社の社長だ。今、呼ぼう」
長官は、ベルを押して、秘書をよんだ。
「彦田博士を、ここへ案内してくれ」
「は」
しばらくすると、秘書の案内で、彦田博士が、部屋へはいってきた。
帆村が見ると、博士は、五十を少し越えた老学者であった。
そのとき、帆村は、ふと妙な感にうたれたのである。この彦田博士には、前に、どっかで会ったことがあると。
しかしほんとうは、帆村は、まだ一度も彦田博士に会ったことがなかったのであった。それにもかかわらず、博士に会ったことがあるような気がしたのは、別の原因があったのだ。そのことは、だんだんわかってくる。
長官は、両人を、たがいに引き合わせると、
「ところで、彦田博士。例のX塗料が手に入ったのです」
「えっ、X塗料が、ほんとうですか。いや、失礼を申しました。でも、あまりに意外なお話をうかがったものですから、あれが、まさか手に入るとは」
「そ
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