てしまったのだった。うしろを向かない帆村に、なぜそんな器用なことができたであろうか。それはなんでもない。彼は小さな凸面鏡《とつめんきょう》を手の中にもっていて、その鏡にうしろのトラ十のすることをうつし、すっかりみてしまったのである。
「おい、曾呂利。そこに、お前のもっているその箱には、何がはいっているのか。おい、こっちへ、それをもって来い」
とつぜん、トラ十が、帆村の大事にしている箱に目をつけ、つよい語気でどなった。ああ、この箱! これをトラ十に渡しては一大事である。帆村は、俄《にわ》かに、一大|窮地《きゅうち》へほうりこまれた!
貴重《きちょう》なX塗料《とりょう》
このときほど、困ったことはない、と、帆村探偵はのちのちまでも、その当時のことを語りぐさにしている。
トラ十の目をつけた四角い箱には、帆村が、はるばる海外まで使をし、ようやく手に入れてきた貴重な物品が入っていた。それは一たい何であったろうか。
それは、外でもない。X塗料であった。
メキシコで発明された極秘《ごくひ》の新火薬BB火薬のことは前にのべた。BB火薬はすこぶる爆破力が大きい新火薬で、しかもこの火
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