ったが、そのたびに、はッと気がつき、帯をたよりに、命の板切のうえにとりつくことができた。
長い夜が、ようやく暁《あかつき》の微光《びこう》に白みそめた。風が出はじめて、海上に霧はうごき、波はようやく高い。今夜あたり、一あれ来そうな模様である。帆村探偵には、あらたな心配のたねができた。
夜が明けてみると、昨夜中、命をあずけてとりついていた板切というのが、船具《ふなぐ》の上にかぶせておく屋根だったことがわかった。
帆村は、時間とともに、だんだんとおくまでのびていく視界のひろがりに元気づきながら、どこかに行きすがりの船影《せんえい》でもないかと、やすみなく首を左右前後にまわした。
すると、目についたものがある。一|艘《そう》の小さい和船《わせん》であった。誰か、そのうえに乗っているのが、わかってきたので、帆村は、ただよう板切、船具おおいのうえによじのぼり、手を口のところへ、メガホンのようにあてがって、おーいおーいとよんだ。
そのこえが、相手に、きこえたのであろう。やがて、朝霧の中から、ぽんぽんという発動機の音がして、その和船が帆村の方へやってきた。
「おーい、こっちだ。その船に、の
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