れ》にすがって漂流をはじめた。
漂流《ひょうりゅう》
帆村は、しっかと、板切につかまって、波のまにまに、どこまでも、漂流していった。
海上はたいへん、なぎわたって、波浪《はろう》も高からず、わりあいしのぎよかったのは、帆村にまだ運のあったせいであろう。
彼は、命よりも大事な例の箱を、しっかり背中に、ななめに背おっていた。
海は、いつまでも暗かった。まるで、時刻が、この海ばかりを、忘れ去ったかのように思われた。
帆村は、だんだん疲《つかれ》を感じてきた。そしてついには、うとうとと眠気《ねむけ》をもよおしてきた。
(これは、たいへん、うっかり眠ろうものなら、お陀仏《だぶつ》になってしまうぞ!)
と思ったので、彼は、船にいるとき、とくべつに、服のうえから腹にまきつけてきた帯をとき、命とすがる板切のわれ目に帯をとおして、しっかりと結び、他の端を、われとわが左手首にしばりつけ、ざぶりと波に洗われることがあっても、からだと板切とは、決して放れないように、用意をしたのであった。
この用意があったおかげで、彼は、いくたびか、眠りこけて、ざぶりと海中に、からだをしずませることはあ
前へ
次へ
全217ページ中75ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング