いって? 機関部へ水が流れ込んでいる。エンジンはどうした。機関部も故障だというのか。船長? 船長は、ここにいられるが」
 雷洋丸の第一船艙におこった爆発事件! そして、運わるく防水|扉《ドア》はしまらないで、浸入した海水は、洪水のように機関部へ流れこんでいくという。
 船長が、電話をかわった。
「おい、どうした。そこは機関部か。なに、機関長だと、それで、どうした。極力手をつくしているが、非常に危険だというのか。よろしい、分かった。すぐ避難命令を出す。そっちは一つ死力をつくして、がんばってくれ!」
 電話機を下においた船長の顔は、まったく、一変していた。眉の間には、つよい決意の色があらわれていた。
「総員、甲板へ。それから、無電で、救難信号を出すんだ。早く」
 船長は、てきぱきと、次から次へ命令を出した。
 しばらくして、船長は、帆村探偵のことを思い出して、彼の名を呼んだ。
 しかし帆村探偵の姿は、もうそこにはなかった。彼は風のように、いつともしれずこの部屋を出ていったのであった。
 雷洋丸の船腹の損傷は、意外に大きく船は見る見る左へ傾いた。機関部もやられてしまって、船内の電灯は一時消え
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