トルでうったのは、ニーナ嬢なんですからねえ」
「え、ニーナ嬢が、あなたや、私たちをうったのですか。これはまた、意外中の意外だ」
「ニーナ嬢は、ある事からして、私を生かしておけないと思ったのでしょう。もうあれ以上、私は曾呂利本馬の姿をしていることは危険なので、こうして、服装を改めたのです」
 帆村の話は、すじが立っていた。船長もようやく帆村の言葉に、すがりつく気持ちができた。
「よろしい。直ちにニーナ嬢に監視員をつけましょう」
 船長の言葉は、どうも生ぬるい感じがあった。でも、船長としては、それが大決心であったのだ。彼は誰を呼び出すつもりか、自ら電話機の方へよって手をのばした。とその時、とつぜん船長も帆村も、そこに居合わせた一同、はげしい振動におそわれた。今まで、静かな航海をつづけていた雷洋丸に、帆村の心配していた大事件が突発したのだ。
 警笛が、ぶーッと鳴りだした。
 宿直の二等運転士のところへ電話がかかって来た。彼は、おどろいて、電話機をにぎったまま椅子から立ち上った。
「えッ、第一|船艙《せんそう》が爆破した? ほんとか、それは。大穴があいて海水が浸入! 防水|扉《ドア》がしまらな
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