はピストルでうたれようとした。あなたを狙っている者が、船中にいるのではありませんか。どうかえんりょをなさらぬように」
「えんりょではありません。わたし自身のことよりも、私は本船の運命を心配しているのです。さっきもいいましたが、はやく附近航行の他の汽船に応援を求められたがいいですぞ。そして直ちに、船内大捜査をはじめるのです。しかし間に合うかどうかわかりません。船長さん、本船は明日、ぶじ横浜入港ができるかどうか、私は疑問に思うのです」
「そ、そんなばかなことがあってたまるものですか」
 と、船長は、他の船員の手前もあって、帆村の予言をつよくうち消した。
「しかし、帆村さん。そのほか、本船についてあやしい節《ふし》があったらぜひおしえてください」
 帆村は、船長の顔を、しばらく、じっと見ていたが、やがて決心の色をあらわし、
「そうおっしゃるなら、申しましょう。まずことわっておきますが、私は、本船にこんな事件が起きようとは、ぜんぜん知らなかったのです。もしはじめから知っていれば、私はこんな危険な船に乗りこみはしなかったのです」
 と、帆村は彼が海外で重大任務をはたして今かえり道にあることをほの
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