すね。それについて、船長。私は、あの団員の中にいる曾呂利本馬という背の高くて、右足を繃帯でまいている男が、特に怪しいと思うのですがねえ。まず、あいつを引っぱってきてはどうでしょうか」
「曾呂利本馬? ふふん、ああこの船客か」
 と、船長は、船客名簿をくりながら、指さきで、曾呂利の名をおさえた。
「曾呂利などとは、ふざけた名前だ。こいつから先しらべる[#「先しらべる」はママ]ことはさんせいだ。さっそく、ここへ引っぱって来たまえ」
「はあ、承知しました」
 船長が許可したものだから、ただちに手配がなされ、曾呂利本馬、実は帆村探偵が、船長室に連れてこられた。
「おいおい、そんなに手あらくしてはいけない、この方はお客さまなんだから」
 船長は、水夫をいましめた。
「いや、この人は、どうしても来ないといって足のわるいくせに、あばれるもんですから、つい、こうなるのですよ」
「いけない、いけない。まあ、曾呂利さんとやら、ゆるしてください」
 と、船長は、さすがにていねいだった。だが、船長は曾呂利を一目見るより、これは只者《ただもの》でないと、にらんでしまったので、ゆだんなく彼のうえに、気をくばる。

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