「船長。これは失敗でしたよ。私をあのように、にぎやかにここへ引っぱりこむなんて、よくありませんでしたよ」
「あなたが、船員に反抗せられたのが、いけなかったのでしょう」
「いや、反抗はしませんでしたよ。船員のいったことは、うそです。おかげをもって、私は、たいへん危険に、さらされることになりました」
そういって曾呂利は、なにかを気にしている様子であった。船長と一等運転士は、それを見て、ますますうたがいを彼のうえにかけた。
「まあ、おちついて、この椅子にかけてください。わしは船長として、ぜひあなたからききたいことがあるのです。正直に答えてくれますか」
「船長さん。私をおしらべになるのは、むだですよ。それよりも、すぐさま、船内|大捜査《だいそうさ》をなさることです。殊に、貨物をいちいちしらべるのです。それと同時に、無電をうって、東京の検察局の援助を乞《こ》われるのがよろしい」
「なにを、ばかなことを」
「いや、その方が、いそぎます。『本船ハ危機ニ瀕《ひん》ス、至急救援ヲ乞ウ』と、無電を」
といっているとき、廊下の方に、だーンと大きな銃声、とたんに一発の弾が、ひゅーっとうなりを発して、室内に
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