もどってくれば帆村探偵は、たちまち、怪しい行動を、見られてしまうところだった。
「どうしたんですか、看護婦さん」
と、帆村探偵は、なにげない様子で肘かけ椅子にもたれたままたずねた。
「あら、あなたをほったらかしにしておいて、どうもすみません。松ヶ谷さんが、石炭庫の中でたいへんなのよ」
看護婦は、手術の道具を、下へおろすのにいそがしい。が、手よりも口の方は、もっとよく動く。
「あたし、こんなおどろいたこと、はじめてですわ。松ヶ谷団長さんの顔ったら、たいへんよ。顔中すっかり火傷《やけど》をしてしまって、それに眼が、ああ、もうよしましょう、こんなことをいうのは」
「眼が、どうしたのですか」
「あの様子では、もう永久に、物が見えませんわ、かわいそうに……。盲目になっては、猛獣をつかうことができないでしょう。お気の毒だわね。ミマツ曲馬団は、メキシコで見物にいって、とても冒険が多いので、感心しちゃったけれど、団長さんがあれでは、もうだめだわ」と、看護婦はしきりに残念がる。
「団長は、一体、石炭庫の中でなにをしていたのですか」と、帆村探偵は、こえをかけた。
「それが、たいへんなのよ。石炭の中に、
前へ
次へ
全217ページ中38ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング